本当のエゴン・シーレのこと(真実は絵の中にある)
エゴン・シーレ(1890-1918)は、20世紀初頭のオーストリア表現主義を代表する画家で、生涯で約3000点もの作品を残しました。多くの自画像と裸婦を描き、未成年者誘拐の容疑で逮捕されたスキャンダルでも知られています。
また、第一次世界大戦時のスペイン風邪により、28歳の生涯を終えた悲劇の画家としても一般的に知られています。こうした話題性を持つ為か、シーレ作品の愛好者は年々増え続け、彼の生涯をモティーフにした映画なども公開されています。
はたしてそれらのイメージは、シーレの実像を映しだしているのでしょうか。
知られざるシーレ
一度でも腹を立てたり、不機嫌なシーレを見たことがなく、善良、無欲で嫉妬のない人間だったと、シーレの人間性について、パトロン兼作品収集家で大切な友人でもあったハインリッヒ・ベネッシュは証言しています。
また、 シーレは少年期によく描いたように自然も多く描いていました。素晴らしい風景画もたくさん残しています。
シーレが多くの自然を通し、何気ない道端に咲く可愛らしい野草を始め、身近で愛すべきものを描いたことも忘れてはならないことだと思います。
シーレにとっての喜びは地位や名誉ではなく、自由に絵を描くことだったのかもしれない。妻エディット(愛称ディト)に寄せる言葉をシーレは残しています。
愛するディト
この本の中へ君は鉛筆あるいは色鉛筆を使って
自然の秘められた不思議を、
素朴な再現でいいからしっかりと捉えるがいい、[・・・]
すべては試みであればいい
[・・・]
ぼくが自然へ戻って行ったとき、ぼくが心楽しかったように、
君も経験してほしいんだ、どこにぼくらは生きているのかを、
君が意欲をもっているならば!
(かれの妻のためのスケッチブックから
大久保寛二編訳『エーゴン・シーレ日記と手紙』白水社1991年、279〜282頁)




